私がキッズライン社を信用できなくなった理由

キッズラインに登録しているベビーシッターが逮捕されました。

内容がおぞましすぎて冷静になれないのでそこには触れません。

キッズラインというサービスを推してきた責任として、今回の件について整理するとともに対応を明示します。

はじめに

私は「ベビーシッター文化」が、親にとっても子どもにとってもとても良い存在として、今より広まってほしいと今でも考えています。

多くの方が指摘しているように、ほとんどのベビーシッターの方がプロ意識高く適切な保育サービスを提供してくれているものと信じています。

ごくごく一部の許されざる者のために、業界全体、ベビーシッターさん全体が否定されるようなことはあってはならないと思います。

ただ、やはり子どもの命や尊厳に関わることなので、微小なリスクもなくしたいと考えています。

それほど私の中で見解が整理できているわけではないので、引き続きいろんな方の意見を伺いながらアップデートしていきますが、現時点で考えていることと対応を記載します。

キッズライン社のビジネスモデルについて

キッズライン社に登録しているベビーシッターはキッズライン社に直接雇用されているわけではありません。

キッズラインというサービスはあくまでもCtoCサービスのプラットフォームです。

キッズライン社は、保育を必要とする親と保育を提供するシッターのマッチングを手助けするための仕組みやアプリを提供する事業者です。

利用者が同意している規約もその前提の記載になっています。

端的に言うと「プラットフォーマーなのでこれこれこういうことの責任は当社にはないですよ」ということです。

創業経営者である経沢香保子氏の語った「覚悟」

私はキッズライン社のプラットフォーマーというビジネスモデルや規約そのものが、それ単体で問題があるとは考えていません。

責任の範囲を明確化している点はそれほどおかしなことではないと思います。

ただし、規約上でそのように責任を回避することが、利用者の安心安全を軽視して良いということとイコールになることは絶対にあり得ません。

むしろ規約上で責任を回避するのであれば、なおのこと安心安全を徹底的に追求すべきです。

キッズラインの創業前に、とあるベビーシッターが起こした悲惨な事件がありました。

社長の経沢香保子氏は過去の登壇イベントでその事件を紹介した上で以下のように語っています。

CtoCとかこういうクラウドの仕事はインターネットを通じてマッチングするので、ほとんどの会社は個人情報の審査はするけど、クオリティ審査はあまりしない。だけど、私は「ベビーシッター」だからこそ、そこをしっかりやろうという覚悟ができていたのは大きかったと思います。

(引用元:来たる個人の時代、“信用”のあり方はどう変わる? クラウドワークス吉田氏がリファレンスの歴史を読み解く

「覚悟」。

精神論で安心安全が担保されるわけではもちろんないですが、経営者が過去の事件やビジネスモデル上の問題点を理解した上で「覚悟」を口にしているのです。

そして実際に覚悟に見合うだけの仕組みや取り組みを必死で構築してきたと信じていました。

「覚悟」の裏付け

安心安全対策

今でも公式HPには「キッズラインの安心安全対策10箇条」が掲載されています。

しっかりした内容だと思います。

特に「3.最大5億円の賠償責任保険」を謳うのは相当難度が高かったように思います。

ベビーシッターのクオリティに関しては「5.登録時に本人確認を実施、サポーターは全員面接」や「7.デビュー後のスキルアップ研修制度」「8.全サポーターのレビュー閲覧可能」が関連性が高いでしょうか。

リスクを分かっているからこそ、覚悟に基づきできることを全力でやっている事業者だと信じていました。

ベビーシッターによる犯罪(疑い含む)発生時の対応

リスク管理の基本として迅速な事実確認に基づき、被害者対応や警察などの機関との連携、必要に応じた情報開示(広報)が必要となると思います。

上述した10箇条の中の「10.トラブル発生時には早急に調査・対応」がそれに当たります。

どこまでいっても100%犯罪を防ぐことは著しく困難なので「仮に起こってしまった場合の対応」に関しては内部的に危機対応マニュアルのようなものを作っているに違いないと思っていました。

キッズライン社は信用できない事業者であると判断せざるを得ない理由

これまで「信じてきました」「思っていました」と過去形で書いてきましたが、信じるに足る理由だったことたちに大きな疑義が生じており、現時点では信用できない事業者であると判断せざるを得ません。

著しく貧弱かつ不誠実な広報対応

私がキッズライン社を信用できなくなった大きな理由は本件に関する広報対応です。

徐々に対応の詳細が分かってきていますが、2019年11月の事件発覚後にその情報を開示したのは雑誌に社名入りで記事が出たためです。

参照:キッズライン社のプレスリリース(2019年5月3日)

公開してこなかった理由を「警察より被害者のプライバシー保護のために公表を控えるよう要請があり、準じてまいりました」と説明しています。

このプレスが出る前からTwitterで話は出回ってはいましたが、報道を受けてようやく公開された形です。

被害者のプライバシー保護は重要ですし、警察が「公表するな」と指導したのが事実であればそれに準じるのが正しいのかもしれません。

ただ正直申し上げて心情的には受け入れがたく、発覚後即座に全ユーザー、全シッターにできる限りの情報開示をしてほしかったですし、すべきだったのではないかと思います。

さらに開示したらしたで、公式HPの下の方に内容が推察できないタイトルで掲載するのみ、公式Twitterでもシンプルにプレスリリースページをシェアするのみ、経沢氏もそれを引用してパット見何のことか分からない一文のみのシェアのみ。

その後の追加プレスリリースに関しては公式HP以外で一切の発信をしていませんし、場当たり的な対応に終止しているようにしか見えません。

今確認したら公式Facebookページでは5月3日のプレスリリースも含めて一切触れていません。

経沢氏は2017年の登壇イベントで「広報担当を雇ったことがない」と話していますが、現在も広報部門や担当者は不在なのではないでしょうか。

参照:経沢香保子「17年間、広報担当を雇ったことがない」 それでもメディアに取り上げられる秘訣は? 

起きることが予測されていた、企業基盤を揺るがしかねない超緊急事態に際して、ユーザーやシッターを軽視した著しく不誠実かつ貧弱な広報対応だと思います。

ベビーシッターの質の担保に対する疑義

2019年11月に事件を起こし、4月に強制わいせつ容疑などで逮捕された橋本晃典容疑者に続き、キッズラインの登録シッターとして2人目となる、荒井健容...

こちらの記事でフリージャーナリストの中野円佳さんが切り込んでくださっていますが、キッズライン社が「覚悟」に基づき謳ってきた「シッターの質を担保する仕組み」の運用が適切でなかったのではないか、という疑義が生じています。

キッズライン社は代理人弁護士を通じて「公式HPに記載の通り厳格な審査を実施している」と回答しているようです。

しかしながら「会社としての公式声明」と中野円佳さんの獲得してきた「生の声」を比較したときに、私としては後者に軍配を上げざるを得ません。

この辺りは引き続き実態解明が待たれます。

男性シッターの排除という「合理的」対応

2020年6月4日にキッズライン社から男性シッターの利用が「一時停止」をする対応が発表されました。

参照:キッズライン社のプレスリリース(2020年6月4日)

弊社としましては、国や自治体との性犯罪データベースの共有が実現することや、安全性に関する充分な仕組みが構築されるまで、また、専門家から性犯罪が男性により発生する傾向が高いことを指摘されたことなどを鑑み、男性サポーターのサポート(家事代行を除く)を一時停止することといたしました。

これは子どもが被害に遭う確率を下げるための判断として「合理的」と言えるのかもしれません。

しかしながらこの判断を「合理的ですね」と受け止めるのは非常に難しいのも事実です。

冒頭で「微小なリスクもなくしたい」と書いたことと矛盾してしまうのは理解しているのですが・・・。

私は性差別全般がなくなるべきだと考えていますし、経沢氏もそうだと思っていました。

「女性は結婚退職したり妊娠して育休取ったり時短取ったりするから昇進はさせられないな」みたいな価値観と戦ってきたあなたが、確率論で男性を排除する「合理的」判断をするのですか、と悲しくなります。

そして「専門家」とは誰でどの論文に基づいた見解や判断なのかを開示してほしいです。

育休男子.jpとしての対応

色々と悩みましたし今も悩んでいますが、現時点での私の対応をいくつか述べさせていただきます。

お詫び

私の記事やツイートを見てキッズライン社を信用する材料としてくださった皆さま、信用できない事業者を見抜けず、ポジティブに勧めてきたことをお詫びいたします。

ごめんなさい。

キッズライン社公式HPのインタビュー記事の非掲載依頼

以前キッズライン社からユーザーとしてインタビューを受けた記事が2本掲載されています。

1本はキッズラインのサービスに触れていない、育休経験を語っているもので、長い間固定ツイートにしていたとても良い記事です。

シッターサービス利用者の声は後編として掲載されています。

公式HPの問い合わせページからから下記文面にて前編、後編ともに非掲載の申し入れを行いました。

こんにちは。
貴社登録ベビーシッター逮捕に関する一連の報道やプレスリリースを拝見しました。
その上で要望がございますのでご連絡差し上げます。

過去私は貴社のユーザーインタビューを受け、公式HPに前後編合わせて2本の記事が掲載されています。
(前編のリンク)
(後編のリンク)
これらを非掲載としていただけませんでしょうか。

今回の件に関する貴社対応に強い不信感を持っており、信用できない事業者のサービスを推進するような記事が掲載されていることは私にとって著しく苦痛であり許しがたいことです。
私に掲載可否を決定する権利がないことは承知しておりますので要望となりますが、心よりの強い要望であることをお察しくださいませ。

「削除」ではなく「非掲載」としておりますのは、貴社が今回の件を踏まえ適切な対処を実施し、信用できる事業者になった際は、再度掲載いただくことも検討したいためです。

御社の理念やビジョンに共感して、これまで応援してきました。
是非信用に足る事業者として復活され、また応援できる日が来ることを祈念いたします。

※2020年6月19日追記

キッズライン社より丁寧な返信をいただき、要望通り記事を非掲載とする対応を実施いただきました。

過去ブログにおけるキッズライン社およびサービスに関する記載に注釈を付与

過去にいくつかのブログでキッズライン社およびサービスに関して紹介してきました。

該当箇所について、当時の文面を変更せず追記の形で現状を踏まえた注釈を付与します。

本ブログ記事のリンクを入れるなどするため、今後随時対応していきます。

最後に

冒頭述べた通り、ベビーシッター文化は今以上に広く親たち、子どもたちのためになり得るものだと思います。

国や自治体などで何らか対策がされた上で、安心して活用できるサービスとして定着していくことを望んでいます。

今回私が信用できなくなったと申し上げてきたキッズライン社ですが、適切な対応と反省をした上で、また心から応援できる企業になってくれることを期待しています。